特集「ウォーデン」

しかし、報酬は簡単に手に入らないことでしょう。なんせ、ウォーデンは今まで遭遇したことがないようなモブですから。人里離れた新バイオーム「ディープ ダーク」に存在する、最恐かつ敵対心むき出しのモブ…と言うと、まるでエンダードラゴンやウィザーのようなボス系モブに聞こえますが、ブランドンによると、ウォーデンはボスではないとのこと。

「なぜ、この強力なモブをボスとして扱っていないかというと、ボスは戦闘で倒す必要がある存在だからです。しかしウォーデンの場合は、気付かれないようにスニークで回避するという、ボス戦とは異なる挑戦をプレイヤーのみなさんに与えたいと思いました。人によっては苦手なプレイスタイルかもしれませんが、マインクラフトの良いところは、それぞれのプレイヤーが何に挑むか、そしてどう挑むかを選べるというところですね！」

目の見えないストーカー

ウォーデンとはディープ ダーク バイオームを探索しているうちに遭遇することになる存在かもしれませんが、本来はネザー アップデート用に開発されたモブなのです。

「新しいバイオーム用のアイデアが書かれた付箋があったのですが、その中に『音にしか反応しない、目が見えないピグリン』というモブ案がありました」とブランドンは言います。「当時は検討する時間が足りなかったのですが、『洞窟と崖 アップデート』のゲームプレイ サミットを行った際に、再び目の見えないモブを作ろうということになり、私が新たなコンセプトを生み出す担当者として任命されました」。

「ゲームプレイ サミット」とは、バニラ版の開発チームが、今後リリース予定の新コンテンツに盛り込むアイデアを、グループで話し合うミーティングのことです。ちなみに著者は、以前イルカを変えるべきだと主張したことによって、このサミットから締め出されてしまったのですが、著者の素晴らしいアイデアを採用しないことで損をこうむるのはマインクラフトのほうですよ！という話は置いといて、例の付箋について詳しく教えてもらいましょう！

「たしか付箋には『恐ろしい』と書いてあったと思います。そこで、なぜ自分がマインクラフトを長年楽しんできたかについて考えてみたところ、初プレイで迎えた夜に感じた自分の『もろさ』のことを思い出しました。しかし、今ではベテランプレイヤーとなった私は、マインクラフトにあまりにも慣れてしまったからか、その『もろさ』を感じることが少なくなっていたことに気付きました。そこで『どうすれば、最初に味わった恐怖を再び感じてもらえるか？』、『目の見えないモブを導入することの意味とは？』といった具体的なアイデアについて頭を巡らせました。

「当初の設定としては、ウォーデンをディープ ダークのあらゆる場所にランダムでスポーンさせる予定でした」とブランドンは語ります。「しかし、議論した結果、それだとプレイヤーの行動と関係なく遭遇してしまうことになりますので、ウォーデンとの遭遇を回避するためにはディープ ダークを訪れないという選択肢しかなくなってしまうという結論に至りました。そこで、スカルク シュリーカーと連動させることによって、ウォーデンが召喚されるのはプレイヤーのミスによる結果、というゲーム性にすることができました。

悪い振動

音をテーマにしたブロックとモブというのは新しい試みであり、実際に追加されるまでの道のりは決して楽ではありませんでした。ブランドンは引き続き、こう語ります。

「いきなりプレイヤーを追いかけてくるような恐怖ではなく、常に周囲の気配を察知させて、プレイヤーに『どうすれば、バレないで回避できるか？』とハラハラさせることを意識しました。しかし、音というものは、どんな行動をとっても発生してしまうので、そこで私たちは「振動」という音のコンセプトを思いつきました。ただし線引きはかなり難しかったです。たとえば、弓を引いているときに発生する音には「振動」は発生するのでしょうか？こういった振動をエンジンとデザインに検知させるシステムを作るのは困難でしたが、結論としては『ある程度重要な行動が行われた際にのみ振動が発生する』というルールを定めました。たとえば、ブロックを置いたり壊したりした場合は振動が発生しますが、ブロックの採掘中にはまだ振動は発生しません (ブロックを壊す、という行動がまだ完了していないため）。このように、モブと音とバイオームの環境の間に連動性を設けるのは大きな課題でしたね」。

ディープ ダークを隅々まで冒険するには、上手にスニークできるようになる必要があります。ウォーデン自体を倒しても、獲得できる経験値やアイテムはイマイチかもしれませんが、古代都市にはたくさんゲットできるものがあります。謎の巨大建造物には、様々なエンチャントの本があると噂されています。その中にはスニーク中の移動速度がアップする、新エンチャント「スニーク速度上昇」があり、これはウォーデンに感知されるのを回避したり、空中に浮かぶ橋を倍速で作るのにピッタリなエンチャントです。他にも、最後に死んだ場所を指し示すことのできる「リカバリー コンパス」を作るのに必要な「残響の欠片」という資源も見つけられますよ。はたして、これらの報酬はウォーデンを突破するのに必要な努力に見合うものでしょうか？いや、そんなことを疑うのは野暮ですね。そもそも、真の宝物というのは、最後に手に入れた報酬のことではなく、冒険の道中に出会ったウォーデンたちとの思い出なのですから。そうですよね、ブランドン？

「結局プレイヤーがウォーデンとの対峙で得られる、もしくは得たいのは、スリル満点の没入感あふれるプレイ体験だと思います。ディープ ダークでは自分の発する振動に細心の注意を払わないといけませんからね。このゲーム体験は開発者の私にとってもとても面白いものであり、多くのプレイヤーたちにも味わっていただきたいです」。

なんか色々と伺った結果、正直ファントムの攻撃を回避したり、ウィッチの笑い声に怯えていた頃のほうが、臆病な著者にとってはマシだった気がします。英語には「幸運の女神は勇気ある者を好む」ということわざがありますが、著者には勇気なんてないのでギブアップしようと思います。はたして読者の皆様は幸運に恵まれるのでしょうか？

6 月 8 日にリリースされたワイルド アップデートで登場したディープ ダークバイオームを初めて訪れるみなさん、幸運を祈ります！